宮崎空港を利用した際など、滑走路近くに大きなかまぼこ型のコンクリート製の建造物を見たことのある人は多いと思います。
これは太平洋戦争中の掩体壕(えんたいごう)という施設跡で、内部に戦闘機を収納し空襲から機体を守る為に作られたものです。
宮崎空港があった場所には、かつて旧日本軍の飛行場がありました。
昭和十六年(1941)より赤江地区(津屋原・高畑)の土地を接収し、昭和十八年(1943)に日本海軍赤江飛行場として完成、掩体壕群は戦争が激化し赤江飛行場の重要性が増してきだした昭和十九年(1944)に建造されました。
滑走路北西側と少し離れた本郷北方の丘陵東側の麓周辺に、合せて有蓋中型7基・有蓋小型7基・無蓋中型が37基作られましたが、戦後の開発でほとんどが撤去され現在は有蓋中型4基と有蓋小型3基を残すのみとなっています。
掩体壕は戦時中日本全国で建造され、現存するのは35ヶ所約100基ほどですが、殆どの地域に於いて1~3基程度しか残っておらず、宮崎市に7基もの有蓋掩体壕が残っているのは全国的にみても珍しく貴重なものとなっています。
その他、飛行場周辺、及び本郷地区にかけて軍の病院、対空陣地、弾薬庫、地下指揮所、地下司令部、高射砲陣地、飛行場要因兵舎、パイロット用兵舎などの施設が数多く設置されました。
また、大淀川北側の有料道路近くの中西町に弾薬庫跡[MAP]がありました。
昭和十九年(1944)海軍高射砲隊北村部隊が築いた陣地跡ですが、行政や住人の無理解により平成二十四年(2012)に取り壊され現在は見る事ができなくなってしまいました。
※今回掲載する施設はその殆どが国有地や民間所有地であるため、許可の無い立ち入りや地域住民に迷惑のかかるような行為はお止めください。
[Google Map]
誘導路
滑走路西端から本郷まで延びる爆撃機輸送用の誘導路。
現在もほぼそのまま一般道路として流用されています。
本郷地区 有蓋中型掩体壕 [一式陸攻(八人乗り)]
一号 (民間所有)[MAP] 幅:27M 奥行:21M
二号 (民間所有)[MAP] 幅:29.5M 奥行:23M
三号 (民間所有)[MAP] 幅:27M 奥行:24M
四号 (民間所有)[MAP] 幅:29.5M 奥行:25M
本郷地区 地下陣地跡 [MAP]
全長55M 幅:2.5M(外)、1.8M(内) 高さ:2M
昭和二十年(1945)三月十八日の宮崎市初空襲によって赤江飛行場が壊滅的被害を受けた為、司令部などが移された場所と言われています。
他にも二本の地下隧道があったとされ、近年同地直上にて陥没事故があり、その際に隧道の中ほどから枝分かれする形で総延長213Mもの横穴壕が発見されました。(現在、以下写真の生活道路以外の枝分かれした隧道は安全の為に全て埋め戻されています。)
西側
東側
内部
本郷地区 殿山地下司令部 [MAP]
殿山という小高い丘の西側の森の中にいくつかの塹壕が点在しています。
田吉地区 有蓋小型掩体壕 [零戦用]
五号 (国有)[MAP] 幅:19M 奥行:10.5M
六号 (国有)[MAP] 幅:14M 奥行:9.5M
七号 (国有)[MAP] 幅:17.5M 奥行:9.5M
田吉地区 弾薬庫 (有料道路北側)
発電機等の機会類や弾薬等を空襲から守る為の施設、もしくはトーチカ跡(鉄筋コンクリート製の防御陣地/特火点)と言われています。
また、現地案内板によるとこの場所に「九六式二十五 mm 単装機銃」が設置されていたようです。
八号 (手前側/民間所有)[MAP] 幅:2M 奥行:7M
九号 (右側/民間所有)[MAP] 幅:2M 奥行:7M
田吉地区 弾薬庫 (有料道路南側)[MAP]
認定無し 詳細不明
八号、九号より一回り小さい施設です。
赤江海軍練習航空隊門柱 [MAP]
赤江飛行場発足時のまま現在も残されています。
宮崎特攻基地慰霊碑 [MAP]
赤江飛行場から出撃した特攻隊などの英霊385柱と宮崎県出身者で宮崎基地以外の基地から発進した英霊414柱、合計799柱の英霊など、陸海軍宮崎基地在籍部隊・海軍神風特別攻撃隊・陸軍特別攻撃隊・宮崎県出身陸海軍搭乗員戦死者、及び宮崎空襲時の戦災死亡者が合祀されている慰霊碑です。
上記門柱南側に、宮崎特攻基地慰霊碑奉賛会によって昭和五十八年(1983)建立されました。
赤江地区 弾薬庫 [MAP]
認定無し 詳細不明 松林内
天井部分が崩落しているため全容は不明ですが、八号・九号と凡そ同型の施設と思われます。
※2021年7月追記
宮崎市による遺跡保存の取り組みとして、2021年3月に二号・三号掩体壕周辺が整備され、駐車場と案内看板が設置されました。
二号・三号掩体壕前 駐車場
※今回掲載して施設はその殆どが国有地や民間所有地であるため、許可の無い立ち入りや地域住民に迷惑のかかるような行為はお止めください。
参考
檍郷土史
宮崎の戦争遺跡 / 福田鉄文 著